(1)鎮静薬,睡眠薬,または抗不安薬使用障害の対応と治療
減薬ペースについては,外来で治療する場合には,等価換算量よりも少し多目の量から開始し最初の4週間は減量せずに,5週日から1週ごとにジアゼパム1mgずつ減量し,ジアゼパム換算量が30mg/日を切ったら2週に0.5mgずつ,15mg/日を切ったら4週に0.5mgずつ減らしていく.そして,6mg/日まで減量できたらいったん減薬を止め,併存精神障害の治療状況や精神症状,さらに離脱症状を確認してから,今後の減薬方針(断薬か,極めてゆっくり減薬か,少量維持か)を検討する.
(2)鎮痛薬、睡眠薬、または抗不安薬使用障害・中毒・離脱
さまざまな鎮静薬・睡眠薬・抗不安薬の中でも,特に症例数が多いベンゾジアゼピン類の場合,発現頻度が比較的高い離脱症状としては,不眠,不安,焦燥,筋撃縮,けいれん発作などがあり,比較的発現頻度が低い離脱症状としては,離人感,浮遊感,知覚の変容,身体感覚の歪み,傾眠,意識障害,幻聴なども報告されている.ベンゾジアゼピン類の離脱症状は,通常,服用中断から2~4週間で消失するが, 一部には年余にわたって持続するという報告もある.
一般にベンゾジアゼピン類による離脱の重症度は,薬剤の血中半減期や投与期間,投与量によって異なっている.ジアゼパムを例にとると,1日服用量l0~20mgを1カ月服用していても離脱が起こる可能性はあるものの,重篤な離脱を呈するには40mg/日以上の服用が必要である.離脱は通常最終服用の2~3日後より発現し不安,不快気分,明るい光や騒音に対する不耐性,悪心,発汗,筋撃縮などが高頻度に出現する.けいれん発作は離脱の中でも特に重篤な症状であり,一般にジアゼパム換算で50mg/日以上の服用者で生じやすい.
(3)「依存とアディクション」(南山堂)
ベンゾジアゼピン系抗不安薬はたとえ常用量であっても長期連用すると容易に依存を生じます、これを常用量依存といいます。また、急に中止することで離脱症状を生じます(表Ⅰ-4-3)。使用は短期間とどめ、4週間以上連続して投薬することは厳に慎むべきです。ベンゾジアゼピン系抗不安薬が高齢者の認知機能を悪化させ,せん妄などの原因となるだけでなく、筋弛緩作用を介して転倒・骨折のリスクを増大させます.ゆえに高齢者に対するベンゾジアゼピン系抗不安薬の処方にはきわめで慎重であるべきです.またベンゾジアゼピン系抗不安薬は服用により不安,焦燥,不眠,興奮,脱抑制などの奇異反応をきたすこともあります.
(1)ベンゾジアゼピンの副作用問題(薬物依存、離脱症状、奇異反応、減薬方法など)を論じる医学文献は多数あるが、その中でも「特集」として発行されている文献を以下に紹介する。
① 臨床精神医学(2003、Vol.32 No.5)_特集 今再び、向精神薬の安全性を問う
② 臨床精神医学(2006、Vol.35,No.12)_特集 ベンゾジアゼピン系薬物の功罪
③ 臨床精神薬理(2013、Vol.16,No.6)_特集 ベンゾジアゼピンと処方薬依存を巡る問題
④ 薬局(2015、Vol.66,No.12)_Bz受容体アゴニスト
⑤ 臨床精神薬理(2017、Vol.20,No.9)_特集 向精神薬の多剤規制と減量・離脱の実際
⑥ 調剤と情報2018年6月号(特集 ベンゾジアゼピンちょっと待った!)
⑦ BzRAsの過去・現在・未来(辻敬一郎、田島治)➡各国のベンゾジアゼピン規制等の内容を紹介している
⑧ アルコール薬物関連障害の診断・治療ガイドライン(平成14年12月15日)じほう社
⑨ 精神医学症候群(第2版)_別冊日本臨床、新領域別症候群シリーズNo.39
⑩ 臨床精神薬理(2018、Vol.21、No.3)_過剰診断と処方薬依存症(辻敬一郎、田島治)
http://www.nippon-rinsho.co.jp/backnum/s_mokuji/7509S.html
(2)詳細は、実文献を購入又は大学医学部図書館等で参照されたい。
全国ベンゾジアゼピン薬害連絡協議会(BYA)